教育長室だより(令和3年10月)

 キミヲマモル          (令和3年10月26日筆)

 2011年(平成23年)、滋賀県大津市の中学校2年の男子生徒がいじめを苦に自ら命を絶った事件を受けて「いじめ防止対策推進法」が2013年に成立しました。凄惨ないじめを苦に自殺して丸10年となりますが、いじめを見逃さない態勢づくり、いじめ事案発生時の対応について、気を緩めることなく点検するなど今一度考えてみたいと思います。
 子どもは、豊かな人間性や思いやりの心が満ちあふれるなかで育てていかなくてはなりません。全ての子どもが笑顔あふれる希望に満ちた学校生活を送るために、いじめに対して未然に防止し、早期に発見し適切に対処していくことが重要です。
 こうしたことに取り組んでいくため本町では、児童生徒の尊厳を保持するため、学校、地域、家庭その他の関係機関との連携の下にいじめの防止等のための対策を効果的に推進するため「小清水町いじめ防止基本方針」を策定しています。(平成30年5月改定)
このほか楽しく充実した学校生活を送るためとして「いじめ防止の手引き」、「不登校対応の手引き」を作成するとともに、「学校における危機管理」学校管理チェックリストの中でもいじめ事案発生時における対応行動について明示しています。
 本町の小中学校は各1校で現在の小学校児童数は約200名、中学校生徒数は約100名で基本的に1学年1クラス学年が、小中9年間おなじ顔ぶれで学校生活を送ることになります。小さな町の素朴で素直な子どもたちばかりなので、これまで重大ないじめ、命に関わる事案はありませんが、9年間の学校生活のなかで子どもたちは心身ともに成長します。その過程には成長に必要な反抗期、思春期も迎えますし大きく心が揺れ動きます。そのような中にあって個々の子どもたちが、「いやな思い」をすることが一度もないはずがないと私は思います。しかし、理由はどうあれこの「いやな思い」がいじめにあてはまるのです。いじめの定義は「いやだ」と思ったらその子にとってはいじめを受けたことになります。身体的暴力は目に見えても、いやだと思う心の中は見過ごされがちです。当事者本人の訴えがない場合は、当然、学校現場の先生方の観察も大事です。このほか児童生徒への調査票の提出によって状況の把握に努めています。道教委によるいじめ問題への対応状況の調査結果(6月末現在)では、認知したいじめ件数が6,281件で小学校が4,297件と最多、対応状況では、心理的、物理的行為が止んでいるが、その状態が相当期間(3カ月程度)経過していないものが99.7%を占めています。一方、3カ月程度経過しているが、心身の苦痛を感じているが、20件となっています。
この調査結果ではふれていませんが、その陰には現場の先生方をはじめ地域や関係機関皆さんのご苦労があるのは当然です。
 本町では、いじめ事案が発生した場合はその都度、学校から教育委員会に連絡が入りますし、毎月定例の校長会・教頭会議において不登校児童生徒を含めてその対応について報告があります。また、関係機関による「いじめ等問題行動防止対策委員会」を開催するなどいじめ防止取組の一層の充実を図っています。
 最近は、人工知能(AI)を活用し、いじめや虐待の被害から子どもを守ろうとする取組みが各地で進んでいるという記事を目にします。AIが過去に起きた事案の大量データを分析し深刻度を予測、被害が大きくなる前に早期に手をさしのべる。これまで届かなかった子どもたちの声や、気づくことができなかった苦しみにAIが寄り添うのだそうです。
いじめが起きた時間や場所、相手、報告者など約50に上る項目を入力すると、自動的にいじめが深刻化するリスクをパーセントで表示する。70%以上の場合は早期に手厚い対応が必要とのことです。大規模校においては児童虐待や不登校を含めると報告件数が多すぎて学校や、教育委員会職員の確認では時間がかかりすぎ対応が遅れるからなのだろうと思います。ここでいうAIはETやAIのようにスピルバーグ映画に登場するような人と心を通わす、人間になりたいといったようなファンタジーの世界ではありません。現在あるAIは当然心を持たない、あくまでもデータに基づいて数値化した目安、人の手助けとなる道具、システムとして捉えなければなりません。
 当然、データ入力に誤りがあってはならいし、AIが出した答えだからといって直ぐさまそれを信じて判断するのはどうかと思いますし、ましてや言い分けにしてはいけません。
 この小さな町だからこそ子どもに寄り添い皆で見守ることができるのではないでしょうか。
AIがキミヲマモルのではなく、君を守るのは家族や友だち、学校の先生方、地域の人たち皆でなければなりません。そう思いませんか?
 
教育長 加藤 友幸

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